#9『パイドン』公演レビュー

ご来場者アンケートでレビューとして公開OKをいただいた方のコメントを掲載しております。末尾の()内の数字は公演に対する満足度です。(1~6点)

  • デイドリ、初観劇でした!回遊型というのもあり、一人でずっとぐるぐる回ってました。ソクラテスの考え方がよく伝わる表現、観劇していくうちにどんどん世界観に惹き込まれるような空間、映像、音響、照明、役者の身体の動き、これらが合わさりこの作品は一種の芸術のような美しさが際立ち、これは観る人達を惹きつける素晴らしいものだと感じました。(6)
  • 『ソクラテスの弁明』から気になっていたデイドリの作品を初めて観ることができて嬉しかったです。この福岡の地で20代の若い方々がこのような難解なテキストの上演に挑み、ただ台詞を追うだけの劇ではない形で、総合芸術として様々なフックとなる要素を仕掛けながら60分という短い時間で見事にまとめ上げられていた様子は、同じ県に住む同世代の者として勝手ながら非常に頼もしく、もっと多くの方にこの劇団の作品を観てほしいと感じました。
    私が観劇する中で最も印象に残ったのは、ソクラテスと弟子たちが終始堂々と議論する態度でした。台詞に出てくる言葉は決して平易でないものの、俳優の皆さんの演技は分かりやすくかつリアリティがあり、死とは何か、哲学者とはどんな者か、魂は不滅なのか、といった抽象的な問題について、死を目前にしたソクラテスが弟子達との対話を通じて真剣に追究するその場面が確かにあったのだと思わされる迫力がありました。ソクラテスの死後2000年以上が経った現代を生きる私たちも、しかし、死とは、肉体とは、魂とは、という問いに対する答えは持ち合わせていません。紀元前の大昔、今とは社会情勢も世界観も何もかもが違う外国で生きた人々が、同じように抽象的な問題について悩み、議論する様子を再現することは、彼らに対する鎮魂であると同時に、そこに居合わせた我々観客に対する激励でもあるように感じました。(最近、個人的に能や浪曲などを聴く機会が多かったため、伝統芸能に対するそのような見方に引っ張られたのかもしれませんが)
    回遊型の客席、映像が使われた演出、懐かしいJ-POPソングの挿入、ソクラテスやパイドンを女性が演じている点など、冒頭にも述べたように鑑賞後に色々語りたくなるような要素がたくさんあるのも楽しい劇でした。
    個人的な要望を一点述べるとすれば、もともと難しいテキストなのでもっと複雑な台詞も残し、もう少し長めの時間で上演しても楽しそうだなと思いました。
    長々と失礼いたしました。今後も益々のご活躍をお祈りしています。(5)
  • 観劇の形式としてとても新しくて、自分はどう振る舞おうか?と考える自分がいることに対して悩みながら観劇しました。自分の肉体がこの空間に与える影響が少しでもあるのが、没入感を生んでいたと思います。(6)
  • 鎖の音は楽しい鈴の音に聞こえたり、苦しみを掻き立てるような音に聞こえたりするんだなと思った。飾ってあるボードも美術館の作品紹介と似ていて、そんな説明がされた登場人物をぐるぐる回ってあらゆる角度から見ていると、一人で大きな絵と対峙しているような、美術館の作品を鑑賞しているような気分になった。回遊型という特殊な観覧方法でなければ味わえない感覚だったと思う。(6)
  • ソクラテスと、弟子たちや友人たちによる降霊、もしくは回想による死者との邂逅。他人の死、自分の死をどう受け入れるか。もしくは受け入れないのか。ソクラテスも、死の瀬戸際まで問答を繰り返していたのかもしれない。死後、弟子たちの、妄執的に魂から欲するソクラテスとの対談は、彼らがソクラテスを忘れない限りなされるだろう。現代社会へのアンチテーゼとも思えたし、私を含む数多の悩み生き続けている人たちに寄り添う作品であると思った。大事な人を亡くし(生きる意味を無くし)、取り残された我々にできることの一つは、死者(もしくは自分)と邂逅し対談すること。すべての意味はわからない。どんな会話がされたかもなんとなくでしか思い出せない。しかしそんなことよりも、あの回遊型空間のあの場にいた人たちが皆、ソクラテスの友人、弟子となり、「魂の不死」について語り合ったあの場を共有したことに、意味はあった。定まった客席がない、照明のあたりがわからないため、客は互いに見合って空間に対して調和の取れた場所に居所を見つけて座る。そのため不意に照明が当たった時に客は客じゃ無くなる。まさか自分が哲学者の弟子として存在するなんて露知らず。昭和ソング。昭和初期でもなく、平成にうつる前の、日本の曲たち。今やリバイバルブームで聞く名曲たちは、聞いた者に嫌でもフラッシュバックを呼び起こす。またはピンと来ないままか。それらは誰もが歌い誰もが聞いていたであろう曲たちだった、のか。今は、なんかもっとわかりやすく書きたかったんですけど。。。回遊型空間、流行れ。Mr.daydreamer、めっちゃかっこいい。本当にありがとうございました。(6)
  • パイドンのステージにある席に座りました。この公演では、演出として、話者に応じて座る席を変えると、文字通り立場の違う考えや体験が可能なのだろうと感じました。例えば、私がパイドンの席に座れば、私はパイドンの視点から、レプリカであるソクラテスを降霊する動機、ソクラテスとの対話のダイナミズム、そういったものをリアルに感じさせる体験だったと思います。公演中にずっと謎であったのが、傘です。ソクラテス(のレプリカ)は、なぜ傘を持っていたのでしょう。日差しから?雨から?身を守っていたのでしょうか?そこだけがよくわからなかったです。(5)
  • 美とは善とは正義とは、といったことを問われた時に、それはあなたのようなものです、と答えそうなほど見惚れてしまいました。(6)
  • 頭を使いたい時は使う使いたくない時は使わずにただその場にいるだけにしてみたり自由を楽しみました。演劇とは!とか性別・年齢・国籍などの型にとらわれない作品のおかげで私も自由になれたのだと思います。美しい60分をありがとうございました。(6)
  • 会場に入った瞬間から舞台が始まっており、とてもわくわくした。自分自身も物語の登場人物であるかのような錯覚に陥り、いつの間にかソクラテスの教えに耳を傾けていた。特に、今回は回遊型であったため、役者を間近に感じられた。目があうことで、私という存在が役者に認知されていることが体感でき、彼らが訴える感情がよりリアルに伝わってきた。自分以外の観客の表情を観れるのも、とても新鮮な体験だった。(6)
  • ソクラテスと弟子たちの対話における言葉や概念は決して簡単なものでは無いのですが役者さんの高い表現力によってスッと入ってきやすく、弟子たちと同様に死や魂の存在について思考している自分がいることに気が付きました。舞台と客席の切り離しがなく、登場人物との距離が近いことによって没入感が生じ、また、ケベス・シミアスが地に足をつけ観客と同じ空間を歩き回っていたこともあいまって弟子目線でソクラテスを見つめ、主張を聞くことが出来ました。回遊型という観劇形式、非常に良いと思いました。照明の切り替わり方が美しく、序盤のJ-POPのシーンの赤と緑が非常に芸術的だと感じました。音響の編集技術が高く、美しさを作り出す照明に対し緊張感を作り出しているように感じられました。紗幕を綺麗に魅せていた映像によって場面の移り変わりが可視化され、また、プラトンの著者という立場を分かりやすく描いていたように感じられました。美術館という空間に合わせて登場人物を「展示」させていたことによって役者さんをしっかりと見つめることができ、身体の滑らかな動きや表情がはっきり見えて、その演技に宿る熱が伝わってきました。プラトンがソクラテスを抱き上げる、毒杯を飲ませる、ソクラテスが倒れるシーンが印象的でずっと脳裏に焼き付いて離れません。今まで見たどの劇のどの場面よりも美しかったです。(6)
  • とにかく美しかったです。衣装も歩き方も立ち姿もすごく美しくて、別世界に入ったようでした。回遊型を初めて体験させて頂きましたが、すごく面白い体験でした。(5)
  • パイドンやケベス、シミアスと目が合う度、まるで市民裁判員になったかのような気分でした。(6)
  • 最初、エンタメのような盛り上がりがあり、デイドリでこのような体験ができるとは思いませんでした。新鮮。(4)
  • たぶん計算されてだと思うし、役者のみなさんや演出家の上野くんの手腕かなって思ってけど、音で気持ち悪さを感じなかった。不必要なノイズの様なモノがなくて、役者の芝居を集中して観る事ができた。回遊型のお芝居というのは初めてでしたが、満足度の高い作品でした。(5)
  • みなさんが、演じ表現することがとっても好きなんだということが、良く伝わりました。人々も一緒に巻き込んで創造していこうとしているところに、更に拓きながら吸収して前へ進みたい熱い思いがあることも感じました。(5)
  • 演劇、芝居というよりは、「死」についての講義という感じでした。面白かったです。ただ、複雑なテーマなので、自分の考えも持ちながら、考えながら、比較しながら見るには、多少テンポが早かったかと思います。(4)
  • 今回 はじめて観劇しました。回遊型(?)の舞台の観劇もはじめてだったので 少しドギマギしました。でも、途中から引き込まれていきました。言葉も難しく、内容も精神世界というか 私にとって難解でした。ちゃんと30分前から入場すべきだったと かなり後悔してます。次回は、早めにそして予習もしてから観劇したいです。(4)
  • 役者と私たちの距離が近いため、その場にいた全員で一つの物語を作っている感覚になりました。同じ内容でも見た回によって、少し違う感想・捉え方になるのではないかと思うので、他の人達と感想を共有したいです。(6)